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2025.05.22

化学でみるジェルネイル ジェルネイルの基礎知識

ネイルサロンにおけるジェルネイル用品の衛生管理

近年サロンワークにおいて手指消毒の必要性が高まり、お客様だけでなくネイリストにとっても衛生管理が従来以上に重要視されています。そのため、安心安全な環境で施術を行うために、正しい衛生管理の知識と技術を今一度学ぶことが重要です。そこで、本記事ではネイリストに向けて正しいジェルネイル用品の衛生管理の方法をお伝えします。特にネイルサロン開業を検討している方は必見です。

衛生管理の目的

ネイルサービスを安全に提供するためには正しいネイル技術に加え、衛生管理に関する正しい知識が必要であり、施術で使用する器具・用具はお客様の爪や皮膚の状態にあわせて適切な衛生措置を講じましょう。特に、お客様の皮膚に接する器具・用具は施術ごとに適切な消毒を行って、「消毒済み」と「未消毒」を明記し適正に管理しましょう。

衛生管理とはお客様に安全なネイルサービスを提供するうえで最も重要な責務と言えるでしょう。

消毒の定義

消毒とは、病原微生物を殺すか、または除去して感染力をなくすことを言います。

つまり対象物に存在している病原性のある微生物を害のない程度に減らすことを目的に行います。

ニッパーやプッシャーなどの器具の消毒方法の種類 

消毒には物理的消毒化学的消毒の2つの方法があります。

  • 物理的消毒方法とは、法熱や紫外線などによって病原微生物を殺滅する方法
  • 化学的消毒方法とは、消毒薬を用いて病原微生物を殺滅する方法

洗浄

まず、消毒を行う前にニッパーやプッシャーなどの洗浄を行います。

洗浄とは、汚れを落とし十分にすすぐ事を目的とします。

洗剤をスポンジに含ませ洗い、水洗いします。しっかり乾燥させた後に消毒へ進みます。

物理的消毒方法

紫外線照射による光エネルギーによる消毒 

使用方法は、紫外線消毒器内の紫外線灯により85μw/cm2 以上の紫外線を連続して20分間以上照射します。注意事項として、器具の汚れを十分に除去した後、直接紫外線が照射されるように置きます。
また、構造が複雑であるため、ニッパーなど直接紫外線の照射を受けにくい形状の器具類の消毒には適しません。 フットセパレートやプッシャー、スパチュラなどが適しています。また、紫外線消毒器内は、定期的に紫外線灯及び反射板を清掃が必要です。紫外線灯は、2,000~3,000時間の照射で出力が低下するため、必要に応じて取り替えを行います。

煮沸消毒器による熱エネルギーによる消毒 

煮沸消毒は、陶磁器・金属等の器具類、繊維製品等の消毒に適しています。使用方法は、消毒する器具が投入された状態で沸騰してから2分間以上煮沸します。その際、水量を適量に維持します。注意事項として、合成樹脂の一部には、加熱により変形するものがあるため消毒を行う前に確認しましょう。

蒸し器等による蒸気消毒 

 使用方法は、器内温度が80℃を越えてから10分間以上湿熱に触れさせます。その際、器内底の水量を適量に維持します。注意事項として、合成樹脂の一部には、加熱により変形するものがあるため予め確認しましょう。蒸気消毒に適しているのは、ガラス・陶磁器・金属等の器具類、繊維製品です。また、タオル等布片類を器内に積み重ねて消毒する場合、最上部のタオル等が湿熱に充分触れな  いよう注意します。

化学的消毒方法

エタノールによる消毒

消毒用エタノールは 76.9~81.4vol/%(最も消毒効果が高い濃度)に調整され販売されているので、薄めずそのままの濃度で使用します。エタノールに10分間以上浸すか、エタノー ル水溶液を含ませた綿もしくはガーゼで器具表面を清拭することで、消毒を行います。注意事項として、消毒液は揮発性が高いため、常に新しいものを用意しましょう。

 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒 

次亜塩素酸ナトリウムは、強力な消毒剤で漂白効果を有し、広範囲の微生物に効果を示します。血液付着もしくはその疑いがある場合も消毒効果が認められています。0.01~0.1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に10分間以上浸して消毒します。金属器具および動物性繊維製品は腐食するので、使用する場合は必要以上長時間浸さないなど取り扱いに注意しましょう。また、消毒液は常に新しいものを用意しましょう。強アルカリ性であるため、刺激が強く使用の際にはゴム手袋を着用するなど、直接皮膚に触れないようにしましょう。

逆性石けん液による消毒

陽イオン界面活性剤の働きで消毒効果を有する消毒液です。使用方法は、0.1~0.2%逆性石けん水溶液(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム)中に10分間以上浸します。注意事項として、石けん、洗剤を用いて洗浄したものを消毒するときは、充分水洗いしてから使用しましょう。また消毒液は、常に新しいものを用意しましょう。

まとめ

一度やり方を覚えてしまえば、日々のサロンワークに取り入れやすいジェルネイル用品の衛生管理。
お客様だけでなくネイリストにとっても非常に重要なのでルーティン化して取り入れる事をおすすめします。ご自身の使用商材や環境によってやりやすい消毒方法を見つけてください。ネイルサロンで提供するのは、単なる「施術」や「デザイン」だけではなく、お客様が安心して身をゆだねられる空間、丁寧に扱われているという信頼感、そして「自分だけの特別な時間」です。
私たちネイルのプロフェッショナルが扱う器具や道具、環境のすべてに清潔と安全が保たれていることは、お客様がネイルを楽しみ、また通いたいと思ってくださる一番の理由になります。
衛生管理は、誰かに気づかれることは少ないかもしれませんが、当たり前に守り続ける姿勢こそが、プロフェッショナルの証であり、お客様の「信頼」をつくる見えないサービスでもあるのです。これからも、「衛生管理=技術の一部」として、日々のサロンワークに誇りを持って取り組んでいきましょう。

 

このコラムを書いた人

5‘OFF スタッフ H.S

美容業界12年勤務。

元ネイリストで、現在は5‘OFF商品企画や開発を担当。表参道にある5’OFF SALON&LABOでは実際に商品をお試しできますので是非お近くにいらした際はお立ち寄りください。