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2025.05.19

化学でみるジェルネイル

ジェルネイルに使用されている主要な成分について

美しい爪を手に入れるために、ジェルネイルは多くの人に愛されています。
しかし、その美しさの裏に隠された成分について、どれだけ知っていますか?
ジェルネイルの成分を理解することで、自分にマッチした最適な製品を選ぶことができるのです。
本記事では、ジェルネイルに含まれる成分について詳しく解説します。

ジェルネイルに含まれる主要成分

ジェルネイルは主に以下の成分が配合されています。

  • (アクリレート)オリゴマー: 主成分。粘度が高く、強度や柔らかさを左右する。
  • (アクリレート)モノマー: 粘度を調整し、持続性や塗りやすさを向上。
  • 光重合開始剤: UV/LEDライトによりジェルの硬化を促す重要成分。
  • 添加剤(顔料、フィラー): 色付けや作業性を向上。

それぞれの成分の特徴をご紹介します。

オリゴマー

ジェルネイルの主成分です。様々な種類がありますが、ウレタンアクリレートと呼ばれる樹脂が良く使われ、一般的には水飴のように粘度高い成分です。接着剤やコーティング剤などに使われることもある樹脂です。このオリゴマーの種類により、ジェル硬化後の強度や柔軟性が左右されます。

また、分子量が大きい成分のため、後述するモノマーより皮膚刺激性が低いと言われています。なお、ジェルネイルの主成分となりますので、商品の成分表示の最初に記載されていることが多い成分となります。

モノマー

モノマーは、粘度を調整することが主な目的です。上述の通り、オリゴマー(ウレタンアクリレートなど)はかなり粘度が高く、水飴のようなものや、傾けても垂れないものもあります。そのような状態では爪に塗ることができないので、粘度を下げる(緩くする)ために、粘度の低いモノマー成分を配合します。

モノマー自身もUVやLEDライトにより固まる(硬化する)特性があります。そのため、モノマーの種類や配合量を調整することで主成分のオリゴマーの性能(柔軟性、密着性、硬化性、耐久性など)を向上させることもできます。

一方で、モノマーは皮膚刺激性皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎を引き起こす懸念もあります。よく知られているものとして、「HEMA(ヘマ)」や「アクリル酸」などがあります。これらの成分を配合することで、ジェルの爪への塗りやすさの向上、爪への定着性(もち)の向上、硬化性の向上などのメリットがあるため、昔からジェルネイルに使われている成分です。一方で、皮膚刺激性と感作性(アレルギー反応が出やすい)が高いことが確認されていますので、アレルギー体質の方は施術中に皮膚に付着しないよう注意することが重要です。

光重合開始剤

UVやLEDライトからの光を吸収し、ジェル成分を固める(硬化)させる成分です。ジェルにライトの光を当てることで固まる(硬化する)ことを光重合反応と呼びます。その反応するきっかけとなる成分がこの光重合開始剤です。この光重合開始剤が含まれていないと、ライトを当ててもジェルは硬化しません。重合開始剤はライトから照射される光のエネルギーを吸収し、オリゴマー、モノマーを固めるきっかけとなるわけです。これにより、ジェルが硬化して高い耐久性や美しい仕上がりを実現することができます。

光重合開始剤もいくつか種類があり、ライトの種類(UV、LED)との相性があります。よく使われている光重合開始剤に対応するライトは以下の通りです。

ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:

UVライト(365nm吸収波長)対応

トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド:

UVライト(365nm吸収波長)+LEDライト405nm吸収波長)対応

なお、太陽光はご存じの通り、紫外線や可視光が含まれますので、ジェルが太陽光にあたると硬化してしまいます。太陽光は、反射して室内に入ってくることもあるので、窓際での使用は注意が必要です。また、室内の照明も、特に蛍光灯にはジェルが固まる光が僅かですが含まれていますので、ジェルの蓋を長時間あけっぱなしにせず、使用後は速やかに蓋をして光を遮るようにしましょう。

添加剤(顔料、フィラーなど) 

カラージェルは顔料と呼ばれる着色剤で色を付けています。顔料の粒子サイズや濃度により発色や均一性が影響されます。また、クリアのジェルでも、固めると薄く黄色になるものには、紫の顔料を少し配合することで黄色感を低減しているのもあります。

また、フィラーと呼ばれる、細かい粒子が配合されていることもあります。成分名としては、「シリカ」、「ジメチルシリル化シリカ」と呼ばれるものが知られています。粘度の調整や、施術時の作業性の向上(垂れにくくする、糸をひきにくくする)を目的として配合されています。

まとめ

ジェルネイルの成分についてご紹介いたしました。成分の理解を深めることで、自分の爪や肌に合ったアイテムを見つけ、快適なネイルを楽しむことができます。成分を正しく理解し、快適にジェルネイルを楽しむための知識として、この記事を参考にしてみてください。

コラムを書いた人
T.F
化学薬品メーカーにて研究開発を従事。
化学薬品の科学的特性を生かし、ネイル商材の開発を行っている。